ひいな遊びの昭和論

昨日親が5年ぶりだかに雛人形を引っ張り出しきて飾ったので
雛人形について熱く激しく語ってみる。



母親が「お雛様を出さなくなった頃から不幸が続いてる気がする!!」
ってそれ単に歳回り的に生活が忙しくなって気持ちに余裕が無くなったり身内が体調崩しやすくなっただけだと思うんだけどね・・・
あーあこれでまたリビングの通路が無くなるよ・・・


久々に出してきたのを見るとやっぱり古びちゃったなーと思って(特に首回りの白無垢のところとか)
自分の歳を噛み締める。




そしていつもの悪い癖でふと下世話な好奇心が頭をもたげ
最近の雛人形との比較とか
あれやこれやと色々調べてみた。


・・・マンション生活普及のせいか、昨今の雛人形事情としては、やっぱり我々世代よりはよほど親王飾りが主流化してますねー。
このご時勢、東宮妃といえども家事をせずには済まされないらしいよ(笑)
「ずいぶん古びてきたし、もううちも親王飾りにしちゃえば?固定費削減セルフサービスで・・・」「リストラ?派遣切り?」「ちょwww鬱だしww」とか無駄な会話・・・



そして歴史好きが気になるのはやっぱり作者の「銘」とか「有職」。
私のには頭師銘「基安」とあったんだけど、京雛ではないらしい・・・
当時は結構人気のあったものだったらしいけど
一体どこで作られたものやら・・・




そして有職
これが驚いた・・・
4年間日本史(特に装束)とか勉強してから改めて見てみると、「オイ!!!」と怒鳴りたくなるような造り方してるよこれ。


女雛は古今雛調とも享保雛調ともつかない妙に重そうな被り物つけてるし。
「マテ、公家のお飾りなのに駕籠とか茶道具があるってまず変じゃね?
何これ!いつの考証してるの!?」と思って良く見てみると
まあ、出るわ出るわ。


装束は奴に至るまで金襴緞子だしorz(そこは青摺りの水干じゃないとダメなところじゃないか・・・)
武官の「おいかけ(弓矢を引く時耳を保護するやつ)」がなくてただの「房」になってるし。
ていうか良く見るとこいつらが持ってるのって「太刀」じゃなくて「打ち刀」なんだよね!!!(爆)
しかも原点も原点、5人囃子って裃!!!
っていうか太鼓・大鼓・小鼓・笛・地謡の5人で完全に能モードじゃねーか!!!(灯台下暗し)
とうとう「うっわ!!こいつら全く公家じゃない!!!」とか叫び出すに至った。
(なんかしかも・・・鼓の打ち方に忠実に人形の手元の形を観察してみると、大鼓の子と小鼓の子の並び方が実際の能舞台とは逆なの・・・なにこれ・・・)


5年ぶりに引っ張り出され、あちこち堀り回され探り回された結果、うちの雛人形は「武家寄り・能舞台をお手本にしている」と認定されました◎
通常7段の筈が、追加の1段に稚児2人もいるし。
人形たちが下に着てる着物が広袖(公家装束系発祥)じゃなくて小袖=厚板(武家系・能装束)だったことだしね。
たぶん間違いなかろう。




ああ・・・昭和バブルの時代って・・・orz
昨今昭和のドサクサに紛れてやっちゃったあれやこれやがだんだん白日の下に晒されてきましたが
将にネオンに踊らされた泡沫の世相orz(爆)


そういえば私、映画「陰陽師」を見て牛車の中が意外に広いことに驚愕しました。男2人座ってそのスペース!?みたいな。
・・・だって雛道具の牛車の大きさじゃ、幼心にも女雛一人で乗ったってさぞかしきつかろうって思ってたもん・・・
うえ・・深窓の令嬢って大変なんだな・・みたいな。
頭が閊えておすべらかしが崩れそう・・・
いくら「なあなあでやろうぜ」の日本とはいえ、あまりにもフォーマット揃ってねーよorz


・・しかしこういう時代、旧華族とか皇族の雛人形はどうしてたんだろう
まさか本家本元に大嘘吐いた人形納めるわけにもいかんだろうに・・・
まともに高倉式有職とかに則った装束作れる職人なんていたのか?
どうだったんだ一体・・・



最近は服飾研究から人形分野へ移った女性作家も目立つみたいですね。
そういうのは襲のリアリティの工夫とか、裳裾の模様や折り目まで再現してあったりとか、有職文様とか、流石にかなりしっかりしてる。
ていうかただキチンと正装してお座りしてるだけじゃなくて、花見の宴を模して衣装の襲の趣向もそれに合わせた創作雛人形とかもあったり(もはやジオラマの領域・・・いいね・・・管弦の遊び編とかも見たいな・・・)
お道具の牛車もちゃんと「出衣」がしてあって女車仕様になってたり。
なんか空間に物語があっていいなあ・・・
私も新しい雛人形欲しくなっちゃうよ(どうすんのそんなもの)





追記
最近かなり進化を遂げている雛人形ですが
まだまだ現在流通してるものの中にも、小鼓を左肩に担いでるヤツがあったりと相当適当なのも横行してるみたいですね。
内閣総理大臣賞とかさあ・・・結局は単に「業界」が「売りたい」だけのものなんだなとか少々ガッカリ。